インフルエンザで仕事を休む場合、ただでさえ発熱で苦しいのに「上司から出勤しろと言われた…」「休んだら有給だっけ?」など、さらなる悩みが押し寄せることも…。
そんなとき、インフルエンザで仕事を休む際の正しい知識があれば、あたふたすることもありません。
今回は、インフルエンザには勤務停止の基準はあるのか、そして休んだ場合、給料はどうなるのか具体的に解説します。
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インフルエンザなのに出勤するように言われたら?
インフルエンザになったとき、上司に出勤するように言われたら、なかなか断りにくいものです。
実際に、養命酒製造株式会社の2019年の調査によると、回答者の22%もの人が、治る前に出勤したと答えています。
しかし、インフルエンザなのに出勤させるのは、「インフルエンザ・ハラスメント」と呼ばれ、大きな問題になっています。
インフルエンザは、完全に治るまでしっかりと仕事を休まないといけない病気なのです。
「インフルエンザ・ハラスメント」って何?
「インフルエンザ・ハラスメント」とは、インフルエンザが治っていないのに会社が出勤を強要したり、自主的に出勤して周りに感染のリスクを与えてしまう行為のことです。
その中でも、会社や上司が無理に出勤させるのは、「強要ハラスメント」と呼ばれ、医療法人社団SECの2020年の調査ではこのような例が実際にあったと報告されています。
- インフルエンザで高熱があったのに、人手不足で出社するように言われ、出社したものの動けずに休憩室で横になっていたことがあります。(30代:女性)
- インフルエンザで休むと連絡してきた人のことを「普通は熱が無いなら出社するだろ」と影で言っているのを聞いてしまって以降すごく休み辛くなった。(30代:女性)
このような状況で休ませてくれないような会社は問題があると言えます。
また、「仕事を休むと迷惑がかかる」などの理由で、自主的に出勤する人もいますが、それは「無自覚ハラスメント」と呼ばれています。
会社や同僚は休んで欲しいと思っているのに、本人がそれに気づかず感染のリスクを職場に持ち込むのは大迷惑なので、気をつけましょう。
法律的にも会社を休んでいい?
インフルエンザで会社を休むのは法律的にも問題ありません。
新型インフルエンザの場合は、感染症予防法で就業禁止が決まっているので、会社や上司が感染した人を出勤させるのは明らかに法律違反です。
また、季節性インフルエンザで労働者を出社させた場合は、会社側が労働契約法にある「安全配慮義務」に違反していることになります。
つまり、本人の症状が悪化したり、周りにもウイルスをうつす可能性があるので、会社が労働者の安全に配慮していないとされるのです。
もしインフルエンザになったら、迷わず仕事を休むようにしましょう。
インフルエンザで仕事を休むべき日数は?
会社を何日休むべきか、明確なルールはありません。
では、何を基準にすればいいのでしょうか?
厚生労働省は「社会人がインフルエンザで休む期間」の問い合わせがあった時に、「学校保険安全法施行規則」を参考にするように伝えています。
ここでは、その規則をもとに休む期間の目安をご紹介します。
熱が下がったら出勤可能?
熱が下がったからといって、すぐに復帰できるわけではありません。
「学校保険安全法施行規則」には、出席できない期間について「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで」と書かれています。
この規則では、発症した日をカウントしないので、実際には「発症した日の6日後、かつ、解熱した日の3日後」に出勤可能と考えるとシンプルです。
ウイルスの感染力が落ちるまで、このくらいの時間がかかると言われているので、熱が下がったとしても3日経つまでは出勤しないようにしましょう。
早く熱が下がったら?
早めに熱が下がった場合は、計算に注意が必要です。
「発症した日の6日後、かつ、解熱した日の3日後」が基準なので、例えば発症からまだ2日しか経っていないのに解熱した場合は、そこから4日待たなければいけません。
つまり、早く解熱した場合は、発症日をもとにして計算する必要があるのです。
就業規則に書いてあることも?
一部の会社では、就業規則で期間が決められていることもあります。
インフルエンザになる前に就業規則を確認しておくと良いでしょう。
インフルエンザで仕事を休むと給料はどうなる?
場合によっては約1週間も会社を休むので、お給料が心配です。
休業手当や有給休暇など、インフルエンザの種類によっても対応が変わってくるので、覚えておきましょう。
インフルエンザで会社を休むときは有給休暇を使うべき?
一般的には、インフルエンザになったら、有給が残っている場合は有給を消化するのが無難です。
なぜなら、有給にしない場合は休業手当などで補うことになりますが、その場合は給与の一部しかもらうことができないからです。
「会社から断られたら?」と思うかもしれませんが、インフルエンザで有給を使う場合、会社側は断ることはできないと法律で決まっているので大丈夫です。
ただし、「有給を消化してください」と言われた場合は、会社側から指定するのは違法なので、有給を使いたくない場合は断りましょう。
有給の残り具合を考えて、あなたが得だと思う方を選べば良いのです。
新型インフルエンザの場合は休業手当をもらえない?
新型インフルエンザの場合は、休業手当をもらうことができません。
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由」により労働者が休業する場合は、休業手当を支払うと決められています。
つまり、労働者が休む理由が、会社の責任の場合は支払い、そうでない場合は支払わないということです。
新型インフルエンザで休むのは感染症予防法で決められているせいであって、会社の責任ではないと考えられるので、休業手当をもらうことができません。
休業手当がもらえる条件とは?
季節性のインフルエンザは、一般的には休業手当がもらえることになっています。
感染症予防法では、季節性のインフルエンザは就業規制されないので、法律のせいではなく、会社の責任で休ませたことになるのです。
この場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を請求することができます。
一方で、法律の解釈によって「体調不良は労働者の責任なので会社の責任ではない」と考えることもでき、休業手当の支払いに会社が応じない場合もあるようです。
傷病手当金はもらえる?
「傷病手当金」は、病気やケガをした場合に健康保険から支給される手当で、インフルエンザの場合ももらえます。
金額は休んだ分の約3分の2ですが、気をつけなければならないのが、休んで4日目以降しか対象にならないということです。
なので、3日目までは有給や休業手当で対応して、4日目からは傷病手当金をもらうという方法が良いでしょう。
なお、待機期間には公休もカウントされるので、例えば土日の2日間をはさむような場合は、有給や休業手当の請求は1日分で良いということになります。
有給休暇、休業手当、傷病手当金の手続きはどうやる?
インフルエンザで仕事を休む際に有給休暇や休業手当などは、どのように手続きすれば良いのでしょうか?
有給休暇の申請について
インフルエンザで有給休暇を消化したい場合は、まず上司に相談しましょう。
総務や経理の担当者に伝えるよう言われる場合もあります。
有給休暇は勤続年数によって日数が増えますが、その会社で半年以上働いていれば1年につき10日間はもらえます。
ただ、勤務日数が週4日以下の場合や勤務時間が少ない場合は、7日以下になる場合もあるので注意が必要です。
勤務期間が半年未満で有給休暇がない場合や、すでに有給を消化してしまっている場合は、欠勤扱いになってしまうので、休業手当や傷病手当金で対応すると良いでしょう。
休業手当をもらうには
会社の就業規則に休業手当について書かれている場合は、すんなりともらうことができるので、まずは就業規則を確認してみましょう。
就業規則に書かれていない場合は、休業手当が積極的に支払われることが少ないようです。
先ほどお話したように休業手当は法律的にはもらえる場合が多いので、上司に相談するか、総務や人事の労務担当者に聞いてみましょう。
しかし、従業員側から会社に休業手当を請求するのは、気がひける場合もあるかと思います。
そんなときは、傷病手当金を活用しましょう。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金の支給手続きは、一般的には、会社の人事部門を通して行います。
傷病手当金は、振り込まれるまで1ヶ月ほどかかってしまう場合が多いので、申請用紙などを早めにもらって提出するようにすると良いでしょう。
まとめ
インフルエンザが治る前に出勤を求められることもありますが、それは「インフルエンザ・ハラスメント」と呼ばれ問題になっています。
出勤停止の期間に決まりはありませんが、「学校保険安全法施行規則」で定められた「発症後5日、かつ、解熱後2日」を守ることが推奨されています。
また、休んでいる間の給料は、有給休暇を消化するか、休業手当や傷病手当金で一部を補うことも可能です。
インフルエンザは誰でもかかる可能性のある病気なので、いざという時のために今回の記事でご紹介したことを覚えておきましょう。
一般社団法人 Mission Leaders Academy Japan 代表理事
堀内 博文
1990年、高知県生まれ。
若手起業家、または起業を目指す 20 代を中心に、ビジネスでの結果を約束する Result Business Producer として活躍していたが、『自分の命の使い道』を『人を目覚めさせ本来の在るべき真の姿に導くこと』と定め、現在は一般社団法人 Mission Leaders Academy Japan 代表理事としてさらに活動の場を大きくしている。